メッシュスニーカーブルース


お店で夏物の靴を見ていた。

夏をどんな靴で過ごそうか..
前は便所スリッパで充分だったけど、
足の指を全部骨折という事故以来がしばらくして、
足の指を露出するのが恐くなっている。

いや恐くはない。
ただ露出していると危ないと感じる。

山道なども歩くので、
木の枝や岩などにくるぶしや足指を
擦りむいたらと心配だ。

スニーカーのフォルムをしているが、
メッシュになっていて通気させる靴があった。

履いてみた。

軽い。

足が勝手に踏み出していく感じになった。

前に勝手に踏み出していくのだから、
結構なことじゃないか..
と思ったが、とある出来事が頭をよぎった。

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とある出来事とは・・

雨の日のいつもの山道散歩コースを歩いていた。

その日はなぜか喉の通りが悪かった。

雨の日だし体調の悪い日もあるだろう..
散歩コースを歩破することが大事だ。

コースを歩き終え、東屋の近くにある水道のベンチで顔洗った。

ウガイをして喉のつまりを取ろうと
カーッペっとやった。

痰の取り方が上品で紳士な男になりたい。

といっても、いつも痰を取る時、
見苦しい感じになってしまう。

見苦しいかもしれないが、
私は生きている。

生きることは見苦しいことだ、と
言い切って肯定しよう。

私には生きる意志がある。

水道を蛇口をひねり水を止めた。

さー行こーかと一歩踏み出した時、
背後から「スミマセン..」と低い声があった。

振り返ると、障害者用のトイレの扉を開き、
なかから、自分と同じぐらいの年齢の男性がいた。

「足をクジいてしまったんです..」

見ると、男性は左足の足首にトイレットペーパーを
グルグル巻きにしていた。

「歩けない状態で携帯もバイクにあって、
バイクの場所まで結構な距離があって困っていたんです」

「くじいたところを冷やさないようにと
トイレットペーパーを巻いてみたんですけど」

と男性は言った。

その日は珍しく冷え込んでいた。

森のなかはさらに冷え込んでいるようだった。

雨が降ってるので散歩してる人もいない。

男性はここに来たのが初めてというから、
かなり心細い気持ちだろうな~と思った。

私がその立場なら、
結構な人通りがあることを知ってるので、
それほど焦りはしないが、
もし知らなかったら、辺りは薄暗いし、寒いしで、
かなり焦るに違いない。

男性は携帯を貸してくれないかと申し出てきた。

男性の言葉遣いや立ち振る舞いはとても紳士だった。

お願いする立場だからそうである必要があるが、
それを抜きにしても、たぶんこの人は良い人だろうな~と
なんとなく思った。

私は携帯で地元の役場に電話して事情を説明して、
その男性に代わってあげた。

救急車を呼ぶほどではないが、
私は原付だし、男性も一人暮らしで
頼る人がいないみたいだった。

男性が篭っていた障害者用トイレに
役場の電話番号があったので、
とりあえず電話してみた..というわけだ。

結局、役場の人が車で来てくれることになった。

誰かが車でこの東屋のところまで
来るには、車止めの施錠を外さないといけないので、
どっちみち役場の人は来る必要があったみたい。

役場の人が来るまで、
男性にどんな風にくじいたのか聞いた。

どうやら、走り出してすぐに小さな石に踏み上げてしまい、
グネリとやってしまったらしい。

そのグネリという感じが私はとても想像できた。

私も歩いていて、足首がグネリとなることがあるからだ。

走っていたら、モロにヒネることになるだろう..

また私の癖で、こういう状況の男性と出会ったことは
何かある..と考えてしまった。

つまり、男性が私でも良かったわけだ。

私も「今日は調子がいいな~」と走っていたりなんかしたら、
クジいていたかもしれない。

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そんなことがあった。

私は冬から今日までずっと水陸両用のゴッツイブーツを履いていた。

軽い仕様の水陸両用ブーツだが、
気温が上がると、さすがに見た目が暑苦しい。

私はそのブーツが気に入っていた。

そのブーツを履くべきだと思っていた。

走ることができなくはないが、
走ろうという気持ちが起きないからだ。

ソールの溝も深く、土の上などを歩く時、
一歩一歩が確実だ。

軽やかさはないけども、
確実で足をヒネるとかは起きにくいブーツだったからだ。

私はとても軽い人間で、
街の熱気にかつがれることがしばしばある。

足指を骨折して以来、不安定になる感覚に
おっかなビックリになっている。

不安定の感覚はブレーキがきかなくなり、
ハンドルも勝手に右左に乱舞するような感覚だ。

その感覚がどれだけ恐いか、
伝わるだろうか。

自分の体なのに、自分の車なのに、
制御がきかず、暴走する恐怖。

その恐怖がガッシリとしたブーツを履かせていた。

しかもそのブーツは意外と軽く、
圧迫感もなく、値段も高くなく、
とても優秀なブーツ。

今年の夏は、このブーツ1本で行こうかな..
と思っていた。

靴下を履いてブーツを履くと、
相当蒸れるけど、その不快感よりも
安心感のほうが上回っている。

お店でメッシュの今っぽい感覚の靴を
試履きしながら、そんなことを思っていた。

ブーツなら足首まで固定されるので、
ヒネることもないだろう..

しかし、メッシュの靴を履いて、
店内を一周してるうちにあまりの快適さに
とりあえず買っておこう..と決意した。

とりあえず一足買って、
様子を見ようじゃないか。

1年を通して、一足のブーツで過ごすことに興味もあるが、
今感覚のメッシュスニーカーの快適さも捨てがたい。

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